玄関 獣医学科 動物科 そのほ科
名前はよく知ってる動物の病気、ニュースでよく聞く動物の病気、法律などに関して。
疾病について 法律について
疾病について
鳥インフルエンザ(届出・法定)
原因
オルソミクス科A型インフルエンザウィルス(ヒトインフルエンザウィルスとは異なる)。ウィルス株や鳥種、混合感染などの有無により症状、致死率が異なる。H5型またはH7型のウィルス株の一部は強毒性を示し、急性で罹患率および致死率ともに高く家禽ペスト(高病原性鳥インフルエンザ)と呼ばれ、法定伝染病に定められている。それ以外の鳥インフルエンザは届出伝染病である。
疫学
世界各地で一見健康な野鳥から様々な株のA型インフルエンザウィルスが分離されており、特に野生カモでウィルス保有率が高いとされる。これらの野鳥はウィルスに感染しても症状を示さず、腸管内でウィルスが増殖して糞便中に排泄され、ウィルスの運び屋となる。ウィルスは水、空気、野鳥、人、車両などを介して伝播するため感染が広がりやすい。ウィルス株の毒性により罹患率は60〜100%、死亡率は20〜100%で、家禽ペストは罹患率・致死率ともに非常に高率の重篤な伝染病である。
欧米では七面鳥でインフルエンザの被害が多く、日本ではマレであった。病原性がそれほど高くない鳥インフルエンザはこれまでも発生していたと思われるが特に大きな問題となることはなく、今回のような病原性の高いインフルエンザが発生したのは1920年代以降、約80年ぶりである。
症状
感染しても無症状な場合から急性経過で死亡する家禽ペスト(法)まで多様な病態を示す。甚だ急性な場合は家禽ペスト特有の症状を示さずに死亡することもあり、診断が難しい。ヒトインフルエンザ同様の呼吸器症状をはじめ、食欲低下、活力消失、腸炎、産卵停止や産卵率の低下、また神経症状がみられることもある。家禽ペストでは上記症状の他にトサカ、顔面、脚の浮腫とチアノーゼ(重度な呼吸器障害による酸素欠乏)がみられ、全身性出血を示して高率に死亡する。鳥インフルエンザは症状が多様なため、流行時以外には臨床症状から診断することは難しく、ウィルスの分離同定により確定診断を行う。
予防・治療
鳥インフルエンザの治療法はない。アメリカ、オーストラリアではワクチンが予防に用いられているが、日本では実用化されていない。家禽ペストは法定伝染病に指定されているため、本病の疑いがある場合には速やかに行政当局に届けでなければならない。
本病は産卵停止や発育不良など産卵鶏・肉鶏に重大な影響を与え、死亡率も高い。さらに感染力が高く空気感染性を有するため、その蔓延防止のために本病の発生した養鶏場の飼養舎の全鶏の殺処分と鶏舎の消毒を行い、さらに半径30km以内の区域の移動の制限を行わなければならないため、養鶏業界への被害は甚大となる。
ヒトへの影響
1997年に香港で鳥インフルエンザに感染し、6名が死亡した。最近では2003年以降、香港、ベトナム、タイなどで10名前後の死亡者が出ている。ヒトでの症状は通常のインフルエンザ同様の症状から重篤な場合には肺炎で死亡することもある。ヒトへの感染は、病鳥との近距離での接触やその内臓・排泄物への接触により感染することが多いとされ、鶏肉や鶏卵の摂取による感染の報告はない。また、これまでヒトからヒトへの感染も確認されていない。しかし、インフルエンザウィルスは他のインフルエンザウィルスとの混合感染などによりウィルスが変異を起こし、場合によってはヒトへの高感染性、高病原性を獲得する可能性もありうるため問題視されている。
牛伝染性海綿状脳症(Bovine Spongiform
Encephalopathy)(法定)
原因
正常プリオン(蛋白質の一種で、特に脳や脊髄など中枢神経系に多い)が変異した異常プリオンが病原体とされる。異常プリオンの自然発生や体外からの摂取により感染する。異常プリオンは消毒剤・紫外線・熱に対して強い抵抗性を持ち、また、もともと生体内の蛋白質であるため、体内で抗体(生体内で産生されるウィルスや細菌などを攻撃する因子)が産生される事もない。つまり、この異常プリオンに対する有効な予防ワクチンや治療法はない。
疫学
異常プリオンが自然発生した牛の神経組織や内臓を加工した動物性飼料(肉骨粉)を他牛のエサに混入して与えていたことが原因となり、イギリスを中心にヨーロッパ諸国やカナダに多くの牛にBSEが蔓延した。同様の異常プリオンによるプリオン病は羊(スクレイピー)をはじめ、猫、鹿、ミンクなどでも報告されている。
症状
異常プリオンは中枢神経系組織に蓄積・増殖して神経細胞の変性を引き起こす。脳の神経細胞は死滅して減少し、脳がスポンジ状(海綿状)となることからこの病名がついた。行動異常・感覚異常・痴呆様行動・転倒・起立不能などの中枢神経障害を示して死亡する。潜伏期は数年〜10年以上と非常に長いため、通常外見から感染を確認する事は難しく、屠殺後にしか確定診断はできない。
予防・治療
症状の緩解・回復・治療法は無く、進行性に死亡するため、感染動物は摘発淘汰される。有効な治療法・予防法はないため、神経系組織やリンパ系組織を飼料・食用に使用しないことが重要である。
ヒトのプリオン病
ヒトでの海綿状脳症(プリオン病)として、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)という病気がある。通常、ヤコブ病は50才代半ば以降に発症し、痴呆などの中枢神経症状を示し、発症後1年以内で死亡する。ヤコブ病の9割は原因不明で、1割前後は遺伝性に起こるとされる。また、ヤコブ病患者からの脳下垂体ホルモンや脳硬膜の移植などにより医原性に感染して問題となったこともある。また、ニューギニアのある部族では死者の弔いのためにその脳を食べるという習慣があり、その部族の間でクールー病という同様のプリオン病が発生していた。
諸外国の対応
1986年、イギリスでBSEが見つかった当時は「人には感染しない」として、BSE症状が出ていた牛を食肉に供せずに処分する以外特に対策はとられなかった。しかし、前述のとおりBSEは潜伏期間が非常に長く、症状が出ていない牛でもBSEに感染している可能性が示唆され、1988年にようやく牛の組織を動物性飼料として他の牛のエサに使用することを禁止し、1989年末には異常プリオンが多く蓄積されているとされる「牛の脳・脊髄・舌・脾臓・胸腺・腸」を人間の食用にすることを禁止した。
しかしそれ以前、1989年まではBSE潜伏期間中の牛の肉・内臓が食用に供されていた可能性があり、この問題が特に重要視されるのは、これまでとは異なるヒトの新型のCJDが発生したためである。1996年、イギリス政府は「近年発生している新型CJDは、これまでとは違った新たな原因、すなわち1989年以前に、BSE感染牛の内臓を食べたことにより、
新型CJDに感染した可能性が否定できない」と、これまでの「BSEは人間に感染しない」という見解から、一転して「人間への感染の可能性」をイギリス政府が認めたため、世界中がBSE問題に混乱する事態となった。
日本の対応
日本でも2000年末までは欧州から動物性飼料が輸入され使用されていた実態が明らかとなり、BSEが発生する可能性は否定できない。当時、EUは狂牛病の5段階リスク評価で、日本の評価を「3(BSE発生国と同様のリスク)」とする報告を出していた。しかし、農林水産省は、狂牛病先進国でもあるこのEUの報告書を受け入れず、その後もこれまで通り行政指導以外の具体的な対策をとらず、牛用飼料として表向きには禁止されている肉骨粉が使用され続け、2001年9月にBSE第一号が確認され、BSE発生国となってしまった。現在(2004年2月)までに10頭前後の牛でBSE陽性が確認されている。
狂牛病感染の危険度(EU医薬品審査庁による分類)
高度感染性:脳、せき髄、目
中度感染性:回腸、リンパ節、近位結腸、ひ臓、へんとう、硬膜、松果体、胎盤、脳せき髄液、下垂体、副腎
低度感染性:遠位結腸、鼻粘膜、末しょう神経、骨髄、肝臓、肺、すい臓、胸腺
口蹄疫(法定)
原因
口蹄疫ウィルスが原因で経鼻、経口、創傷からの感染が主。感染動物の呼気、唾液、鼻汁、糞尿などから大量のウィルスが排泄され、空気伝播により風で遠隔地へもウィルスが飛散する。このウィルスは非常に変異しやすく、診断やワクチンによる予防が非常に困難である。また、感染率・発病率ともにきわめて高い。
症状
発症動物は口腔内や舌に水泡(水ぶくれ)が形成され、重度な場合には舌の表面全体が剥がれ落ちてしまい、摂食不良となる。また、脚や蹄にも水泡が形成されて糜爛・潰瘍となり歩行も困難になる。摂食不良と運動不足により、動物の発育・泌乳量は著しく低下する。
予防・治療
感染牛は発育、泌乳量が著しく低下し、畜産商品としての価値を失う。また、感染力が高く空気伝播するため、蔓延防止のために半径20km以内の地域での家畜の移動制限(この圏内の家畜は全て殺処分し焼却しなければならない)、さらに半径50km以内の地域の家畜の搬出制限も行われ、発生地だけでなくその周囲広範への影響も大きく、畜産業界の経済的な損失が極めて大きい。その発生・蔓延の対策は徹底して行われており、日本では1901年以来発生が見られなかったが、2000年、宮崎県や北海道で本病が発生して畜産界では大騒動となった。
狂犬病(法定)
原因
狂犬病ウィルスが原因でウィルスは唾液中に含まれ、咬傷により感染する。狂犬病という名前であるが、本病は人を含む多くの哺乳類(猫、キツネ、ネズミ、コウモリ、馬、牛etc)にも感染する。
症状
ウィルスは感染部位で増殖し、末梢神経組織に入った後、神経内で増殖しながら脊髄、脳に達する。感染した犬は平均1ヶ月の潜伏期間の後、狂騒状態(異常興奮、凶暴化)となり(草食動物では麻痺型といい、逆におとなしくなることが多い)最終的に死亡する。発症後の致死率は100%である。また、喉の麻痺による嚥下(飲み込み)障害が起こり(水も飲み込めず、水を怖がると言われる由縁)、多量の流涎(唾液の垂れ流し)がみられる。この唾液中に大量のウィルスが含まれ、咬傷により感染を拡大していく。
予防・治療
日本では狂犬病予防法により犬の予防ワクチン摂取が義務付けられているため、昭和31年以来発生していないとされる。万一、感染動物に人が噛まれても発症前にワクチンを打てば効果があるとされる(しかし、2週間毎日の投与が必要であり、その副作用も強いと言われる)。日本では長期間発生はみられていないが、海外ではまだまだ存在する場所もり、日本に上陸する可能性が0とも限らない。また、国内でも野生動物にはウィルスを保有する動物がいないとも限らない。そのため、飼犬の予防注射は現在も法律で義務付けられている。
法律について
家畜伝染病予防法
家畜の伝染疾病(寄生虫病含む)の発生を予防し、蔓延を防止することにより畜産の振興を図ることを目的とするための法律。
対象家畜は主に、「牛、馬、緬羊、山羊、豚、鶏、あひる、うずら、みつばち」となっている。
監視伝染病として26の「家畜伝染病(いわゆる法定伝染病)」または71の「その他の伝染性疾病(届出伝染病)」が定められ、各疾病にその対象家畜が定められている。これらの疾病の蔓延防止のため、届出、隔離、通行遮断、屠殺、焼却などの措置をとることが法的に定められている。
届出の義務:家畜がこれらの疾病に感染した場合、または感染の疑いがある場合(擬似患畜)はその家畜の診断、または死体の検案を行った獣医師(診断を受けていない場合はその所有者)は、省令で定める手続きに従い、遅滞なく、その所在地の都道府県知事にその旨を届け出ることが義務づけられている。
隔離の義務:患畜または擬似患畜の所有者は、遅滞なく、当該家畜を隔離しなければならない。
通行遮断:都道府県知事又は市町村長は、家畜伝染病の蔓延防止のため、緊急の必要がある場合には政令で定める手続きに従い、一部の法定伝染病の患畜または擬似患畜の所在地とその他の場所との通行を、48時間までの範囲内において遮断することができる。
屠殺の義務:一部の法定伝染病(口蹄疫ほか)の患畜又は擬似患畜の所有者は、家畜防疫員(獣医師)の指示に従い、直ちに当該家畜を殺さなければならない。
殺処分:都道府県知事は、家畜伝染病の蔓延防止のため、必要により一部の法定伝染病(家禽ペストほか)の患畜又は擬似患畜の所有者に当該家畜を殺すよう命じることができる。
死体の焼却等の義務:一部の法定伝染病の患畜又は擬似患畜の死体の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却又は埋却しなければならない。
家畜防疫
家畜伝染病予防法に基づく家畜防疫は、国内で伝染性疾病の発生防止、蔓延防止を行う国内防疫、海外から伝染性疾病の侵入防止を行う輸出入検疫に分かれる。
国内防疫
家畜防疫は農林水産大臣の所管であり、その権限は都道府県知事に委任されて各都道府県の行政として実施されている。都道府県には家畜保健衛生所が設置され、家畜保健衛生所の職員を中心に家畜防疫員が任命されている。
伝染性疾病の全般については、発生防止対策として、移動時の証明、検査・注射・薬浴等、消毒、家畜集合施設について制限を行っている。また法定伝染病の発生時には、発生時に蔓延防止対策として、届出義務、隔離・通行遮断・移動制限、屠殺・殺処分・死体の焼埋却、消毒・汚染物の焼埋却、等が実施される。また家畜の所有者に伝染性疾病の予防のために必要な措置を実施するよう努めることを義務付けている。
輸出入検疫
輸出入検査予防法では、輸入禁止、輸入時の検査証明書添付、輸入検査、輸出検査等が定められており、行政はこの輸出入検疫を実施するため、動物検疫所を設置している。また、動物検疫所では狂犬病予防法に基づく犬の輸出入検疫も実施されている。
狂犬病予防法
戦後、野犬の著しい増加とともに狂犬病が大流行して大きな社会不安を引き起こした。そのため、家畜伝染病予防法から狂犬病に関する本規定が独立して制定された。この法律は犬の狂犬病のみに適用され、他動物の狂犬病は家畜伝染病予防法が適用される(すなわち法定伝染病で定められる狂犬病には「犬」は対象家畜とはなっていない)。各保健所には市長の任命する狂犬病予防員(獣医師)を置かなければならない。
犬の所有者は、犬を取得した日から30日以内に犬の登録を申請し、鑑札を受けて鑑札を着けておかなければならない。また、年一回狂犬病予防注射を受け、注射済票を着けておかなければならない。
狂犬病予防員は、未登録の犬、未注射の犬、鑑札・注射済票を着けていない犬を抑留しなければならない。狂犬病に罹り、またはその疑いのある犬を診察した獣医師は直ちに保健所長に届け出なければならない。なお、その犬は直ちに隔離しなければならない。
都道府県知事または保健所を設置する市の市長は、狂犬病発生時には、発生区域内のすべての犬に口輪をかけ、けい留を命じなければならない。そして蔓延防止のため必要がある場合は、犬の一斉検診、臨時予防注射、犬の移動制限・禁止、交通遮断・制限、けい留されていない犬の薬殺などを行うことができる。
家畜保健衛生所
「家畜保健衛生所法」によって都道府県に設置が義務づけられている家畜を対象とした保健所。家畜伝染病の発生予防と蔓延防止、家畜の損耗防止と生産性の向上、家畜の繁殖障害の除去及び人工授精の実施、安全な畜産物の生産、家畜の保健衛生上必要な試験及び検査の実施、その他地方における家畜衛生の向上などを業務としている。
