獣医師国家試験体験記

第二話(3月7日)

「誤算」
 6:30に起きる。出発は7:40にみんなそろって行くので、さっさと身支度をすませる。朝食後、覚醒作用のあるキサンチン誘導体(カフェイン)を含有するリポビタンDを飲み、いざ階下へ。行く前に「今日の占いカウントダウン」をやっていたが、3位まで見ても双子座が出てこないのでチャンネルを変えた。

 会場の九大までは徒歩、電車含めて約20分前後である。前日下見に行った人の誘導で無事到着。試験部屋はどうやら3つくらいに分かれていて、出席番号(受験番号)順に3等分されて配置されるようだ。他所の大学も同様に分散され、1つの教室で80人前後が受験することになる。某漫画のとおり、同じ大学の学生は縦横斜め2列以内には配置されていない。上手い事、各大学をバラバラに配置している。このため、目がいい人なら斜め前の人の解答を見ることも可能だが、はたして、ソヤツが優秀なヤツなのか、どうしようもないヤツなのか全く判断できないため、見ても意味がない。つまり、カンニングはやろうと思えばできるが、やるメリットがない。バレたらOUTだし。自分だけを頼りにしましょう。


 初日は9:30から試験開始で8:45までに教室入りしなさいとのこと。十分余裕があったのでさて、ゴロとまとめでも見なおすか。しばらくして試験監督らしき人々が入ってきた。たぶん県か国かの公務員なんだろうが、かなり若いぞうっ!! どうみてもまだ20代? 1〜2年目くらいじゃないの? どうやら、某漫画でハムテルが卒業後、後輩の試験監督をしていたという妄想もあながち誤りではないようだ。しかし、数分後、予期せぬ自体がっっ!!

 「では、筆記用具、受験票以外のものはしまってください。」 なぬぅっ!? まだ、時間まで30分近くあるぞぅ!? いろいろ説明やらあるんで解らんでもないが、早すぎ! 実際に説明やらを始め出したのはさらに15分後くらいからだし・・・。こいつぁ、最大の誤算だった。だって、まだ時間あると思って見なおしてないモノがいっぱいあるのに・・・。だが、無常にも公務員特有のお堅い機械的口調で淡々と説明は続けられ、問題や解答が配られ・・・さらに待つこと5〜10分。ようやく試験開始である。まさか、開始前にこれほど虚をつかれるとはな・・・さすがは相手は国家レベル、勝負の前からあやうくのまれちまう所だったぜ!!


「偶然」
 初日は午前中A問題(2時間半)、午後B問題(2時間)と時間はたっぷりある。ちゅーか、たっぷりすぎ! 普通にやれば1時間以上時間が余る。見なおしやらマークのチェックやらさんざんやるが、まだまだ1時間あるよ・・・。仕方ないので寝る。周りを見ても、大体同じような感じっぽい・・・。国試で重要なのは「知ってるか、知らないか」である。解らん問題、知らん問題をいくら考えようが解りっこない。体力を温存させるほうが得策である。昼休みは1時間半。だが、前述のとおり、実質1時間弱しかないわけだがね。午後の試験、問題をつらつらと解いていくと、ふと一問の問題に目が止まる・・・。「牛の××病について誤っているものはどれか?」 ビ、ビンゴ!?!?!? まんま、出てるやん! 果たして、あの情報が正しかったのか、たんなる偶然なのかは定かではないが、確実にGETしたのは言うまでもない。そこそこ悩ませる問題のつくりだったので見直しておいてよかった。後日、「まさかマジに××病が出るなんてな〜、全然見なおさんかった〜」と悔やむ学生もチラホラいた。とりあえず、初日の死闘を終え、帰路につく・・・。A問題は難しかった・・・。5割チョイくらいか? B問題は、まぁ・・・6割あるかな? ないかな? ってところでした。

 帰路の途中、あるいはホテルに戻ってからもあの問題はああだ、この問題はこうだと答えの確認をし合う者がいる。はたまた、さっぱりな結果ですでに落ち込みモードに入っている者もいる。開き直って部屋で騒ぐ者も・・・。しかし、ある意味ポジティブな私は今日の試験のことなどキレイさっぱり忘れて、翌日の試験の準備を行う。

「写真」

 さてさて 二日目は実地問題と言われるものである。いわゆる、実践に則した臨床的な試験なわけだが、当然試験会場にホンマモンの犬やら牛やら連れてきて診断させるわけにはいかない。ちゅーか、そんな試験なら誰も通らんだろうし・・・。すなわち、問題は「写真」なわけである。病気やら怪我した動物の写真をみたり、レントゲンや病理組織写真、血液データやらを見て「この病気は何ですか? 原因は何ですか? 治療法は何ですか?」ってな感じの問題が出るわけである。

 で、この実地問題C・Dなわけだが・・・これまでまともに勉強している者など(あんまり)いない。ほとんどがこの前日の夜に勉強するという状態である。はっきりいってこの私もこの日初めてカラーアトラスを開く。。。 ま、実際それでも何とかなるもんで。無論それまでしっかりと知識を頭に叩きこんどけばね。要は問題が文字か写真かの違いだけであり、逆に写真は答えがそのものズバリそこに写ってるわけで。 まぁ、実地問題はビジュアルが多いので右脳的にサァ〜ッと素早く流し勉強ができるので、一通り見終えることができた。


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